1.2.2 lilypond のコマンド ライン オプション

以下のオプションがサポートされます:

-e,--evaluate=expr

.ly’ ファイルを解析する前に Scheme expr を評価します。複数の -e オプションが与えられた場合、それらは順番に評価されます。

表記は guile-user モジュールの中で評価されます。そのため、expr の中で definition を使いたいのならば、.ly ファイルに以下をインクルードして:

#(use-modules (guile-user))

コマンド ラインで以下を使用します:

lilypond -e '(define-public a 42)'
-f,--format=format

フォーマットを指定します。format には svg, ps, pdf, png を選択します。

例: lilypond -fpng filename.ly

-d,--define-default=var=val

これは内部プログラム オプション var に Scheme 値 val をセットします。val が提供されていない場合、#t が使用されます。オプションを OFF にするには、var の接頭辞として no- を付けます。つまり、

-dno-point-and-click

-dpoint-and-click='#f'

と同じです。

ここで興味深いオプションをいくつか挙げます。

help

lilypond -dhelp を実行すると使用可能な -d オプションがすべて表示されます。

paper-size

このオプションはデフォルトの用紙サイズをセットします。

-dpaper-size=\"letter\"

文字列はエスケーブされたクォート ( \" ) で囲まれていなければならないということに注意してください。

safe

.ly 入力を信用してはいけません。

Web サーバを通じて LilyPond フォーマットが利用可能な場合、--safe オプションか --jail オプションのどちらかを渡さなければなりません--safe オプションは以下のようなインライン Scheme コードが大混乱をもたらすことを防ぎます:

#(system "rm -rf /")
{
  c4^#(ly:export (ly:gulp-file "/etc/passwd"))
}

訳者: #(system "rm -rf /") はルート ディレクトリ以下を削除し、export (ly:gulp-file "/etc/passwd") はパスワード ファイルをエクスポートします。

-dsafe オプションはインライン Scheme 表記を特別なセーフ モジュールの中で評価します。このセーフ モジュールは GUILE ‘safe-r5rs’ モジュールから派生したものですが、LilyPond API 関数をいくつか追加しています。これらの関数は ‘scm/safe-lily.scm’ でリスト アップされています。

さらに、セーフ モードは \include 指示を却下し、TeX 文字列の中にあるバックスラッシュを無効にします。

セーフ モードでは、LilyPond 変数を Scheme にインポートすることはできません。

-dsafe はリソースの乱用を検出しません。例えば循環データ構造体をバックエンドに食わせることで、プログラムをハングさせることは可能です。そのため、パブリックにアクセス可能な Web サーバ上で LilyPond を使用する場合、そのプロセスの CPU とメモリの両方の使用は制限されるべきです。

セーフ モードは多くの有用な LilyPond 断片がコンパイルされることを妨げます。--jail はより安全な代替オプションですが、セット アップにより多くの作業を必要とします。

backend

バックエンドに対して使用する出力フォーマットを指定します。format の選択肢には以下があります:

ps

PostScript

Postscript ファイルは TTF, Type1, OTF フォントを含んでいます。これらのフォントのサブセット化 (訳者: フォント セットを使用するフォントに限定すること) は行われません。東洋の文字セットを使用する場合、巨大なファイルになる可能性があります。

eps

縮約された PostScript (EPS)。これは各ページ (システム) をフォントを持たない個別の ‘EPS’ ファイルとして吐き出し、フォントを含めたすべてのページ (システム) を持つ ‘EPS’ ファイルを 1 つ吐き出します。

このモードは lilypond-book でデフォルトで使用されます。

svg

SVG (Scalable Vector Graphics)。これは各ページをフォントを埋め込まれた個別の ‘SVG’ ファイルとして吐き出します。埋め込みフォントをサポートする SVG ビューアか埋め込みフォントを OTF フォントに置き換える機能を持つ SVG ビューアが必要になります。UNIX では、Inkscape (バージョン 0.42 以降) を使うことになるかもしれません。使用前に、OTF フォントを LilyPond ディレクトリ (一般には ‘/usr/share/lilypond/VERSION/fonts/otf/’) から ‘~/.fonts/’ にコピーしてください。

scm

生データ – 内部 Scheme ベース描画コマンド – を吐き出します。

null

譜刻された楽譜を出力しません。-dno-print-pages と同じ効果を持ちます。

例: lilypond -dbackend=svg filename.ly

preview

タイトルとファイル システム情報を保持している出力ファイルを生成します。

print-pages

すべてのページを生成します。デフォルトです。-dno-print-pages-dpreview と組み合わせて使うと有用です。

-h,--help

使用方法の要約を表示します。

-H,--header=FIELD

ヘッダ フィールドをファイル ‘BASENAME.FIELD’ に吐き出します。

--include, -I=directory

directory を入力ファイルのサーチ パスに追加します。

-i,--init=file

init ファイルとして file をセットします (デフォルト: ‘init.ly’)。

-o,--output=FILE

デフォルトの出力ファイルとして FILE をセットします。適切な接尾辞が追加されます (つまり、pdf ならば拡張子 .pdf が追加されます)。

--ps

PostScript を生成します。

--png

各ページの図を PNG フォーマットで生成します。これは内部で --ps を使用します。画像の DPI 解像度は以下のようにセットします:

-dresolution=110
--pdf

PDF を生成します。これは内部で --ps を使用します。

-j,--jail=user,group,jail,dir

lilypond を chroot jail 環境で実行します。(訳者: chroot jail 環境とはセキュリティのためにカレント プロセスに対してルート ディレクトリの位置を変更すること。)

--jail オプションは、Web サーバを通じて LilyPond 譜刻を実行するときや LilyPond が外部から提供されたソースを実行するときに、--safe よりも自由度の高い代替手段を提供します。

--jail オプションはコンパイル プロセスの開始直前に lilypond の ルートを jail に変更します。それからユーザとグループを提供された環境にマッチするように変更し、カレント ディレクトリは dir に変更されます。このセットアップは jail (牢獄) から抜け出せないということを (少なくとも理論的には) 保証します。--jail を指定した lilypond の実行はroot (ユーザ名) として行われる必要があります。通常、これは sudo を用いた安全な方法で行われます。

jail のセットアップは少々デリケートな問題です。LilyPond がソースをコンパイルするのに必要とされるものすべてを jail の内部 で見つけられるということを保証しなければならないからです。一般的なセットアップには以下の項目が含まれます:

専用のファイルシステムをセットアップする

noexec, nodev, nosuid などのセーフ オプションでマウントするための専用ファイルシステムを作成すべきです。こうすることで、LilyPond から実行可能形式ファイルを実行したり、デバイスに直接書き込むことは不可能になります。専用のパーティションを作成することを望まないのなら、適当なサイズのファイルを作成し、それを使用してループ デバイス (ループバック デバイス) をマウントしてください。専用ファイルシステムはさらに、LilyPond が許可されたディスク容量以上には書き込めないということを保証します。

専用のユーザをセットアップする

jail 内部で LilyPond を実行する際、低い権限を持つ専用のユーザとグループ (仮に lily/lily とします) で行うべきです。このユーザが書き込み可能なディレクトリが 1 つだけ存在すべきであり、それを dir に渡します。

jail の準備をする

LilyPond は実行中にいくつかのファイルを読み込む必要があります。それらのファイルをすべて jail にコピーしておきます。それらのファイルが本当のルート ファイル システムで存在しているパスと同じパスにコピーします。LilyPond インストールの内容すべて (例えば、‘/usr/share/lilypond’) をコピーすべきです。

問題が発生した場合、その原因を突き止める最も簡単な方法は strace を使って LilyPond を実行することです。これによりどのファイルが見当たらないのかがわかります。

LilyPond を実行する

noexec でマウントされた jail の中では、外部プログラムを実行することは一切できません。そのため、外部プログラムを必要としないバックエンドで LilyPond を実行しなければなりません。すでに述べたように、jail モードでの LilyPond の実行はスーパーユーザ権限で行われならず (もちろん、その権限はすぐに外されます)、たぶん sudo を使います。LilyPond が使用可能な CPU 時間を数秒に制限する (例えば、ulimit -t を使って) というのは良いアイディアです。さらに、OS がサポートしているのなら、割り当て可能なメモリ容量を制限するというのも良いアイディアです。

-v,--version

バージョン情報を表示します。

-V,--verbose

冗長表示モードにします: 読み込むすべてのファイルのフル パスを表示して、時間情報を表示します。

-w,--warranty

GNU LilyPond の保証責任を表示します。(GNU LilyPond には保証責任はありません!)


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